未経験にもかかわらず、ゆうこすに声を掛けられたデザイナーに訊く学び

デザインは、走りながら学ぶ。小島香澄が未経験でKOSデザイナーになってから

モテクリエイターゆうこす(菅本裕子さん)が代表を務める株式会社KOSで、唯一のデザイナーとして活躍する、小島香澄さん。2年前まではハウスメーカーで営業をしていた彼女は、「提案資料の作成」をきっかけに、一念発起してデザイナーを志望。専門学校を経て2019年4月にKOSに入社しました。ゆうこすさんの大ファンで、入社のきっかけはTwitterだったといいます。一体どのようにデザインを学び、未経験からKOSのデザイナーへと転身したのでしょうか。そのキャリアと学び方について伺いました。

公開日:2020/02/27最終更新日:2020/02/28

小島香澄
株式会社KOS デザイナー
1993年生まれ、 神奈川県出身。
中央大学卒業後、 ハウスメーカーにて営業職に就く。 お客様への提案時にお渡しするプレゼン資料のデザインを褒められたことがきっかけで、 デザイナー職への興味が高まり、 入社2年目の冬に転職を決意。 デジタルハリウッドSTUDIO上野にて専科Webデザイナー専攻を受講したのち、 Web制作会社へデザイナーとして転職。 転職前後を通じて学習の記録や将来携わりたい仕事をSNSで発信していたところ、 モテクリエイター ゆうこす(菅本裕子)の目に留まり、 2019年4月に株式会社KOSへ転職。 現在はゆうこすの手がけるサービスやプロダクトのデザインを担当している。
Twitter:@_mi_su_ka_

1.提案資料づくりで「好きなこと」を思い出す

小島さんがデザイナーへの道を選んだのは、新卒で入社したハウスメーカーで働くなかでのこと。富裕層向けに不動産投資の提案営業をする際に、提案資料の「デザイン」が社内で評価されたことがきっかけでした。

小島「賃貸物件を建てて不動産投資をするという『大きな決断』をしてもらうには、しっかりとした提案・裏付け資料が必要です。そのため、日々の業務の中でエリアの市場価値やどんな層が入居する物件にすべきかなどを、『市場調査兼ご提案資料』としてパワーポイントにまとめてお渡ししていたんです」

勤めていたハウスメーカーでは、デフォルトのテンプレートをそのまま使って資料をつくる人が多かったのだそう。小島さんはそのテンプレートで作った資料は「わかりにくい」と個人的に感じていたといいます。その中で、たまたま上司から依頼された資料作りが彼女の転機になりました。

小島「どう作ったら分かりやすくなるかを考え、テンプレートではなく自らデザインして資料を作ってみることにしたんです。その資料を上司に見せたところ、『わかりやすいね』と好評価をもらい、徐々に他の上司や先輩からも相談を受けるようになりました」

「プレゼン資料をわかりやすくデザインして見せた方が成約率も上がる」というデータが社内にあったこともあり、小島さんの作った資料は社内でも注目を集めるように。最終的には小島さんの作ったパワーポイントのフォーマットを社員みんなで使うようになっていったといいます。 この経験を通して、営業も嫌いではなかったけれど「プレゼン資料作成」の方が楽しくなってきたという小島さん。「好きだったことを思い出した感覚」だったと当時を振り返ります。

小島「もともと、幼い頃からハンドメイドの物を作ったり、小・中学生の頃からホームページビルダーでホームページを作ったりするのが好きだったんです。ただ、キャリア選択の時には『美大出身でもないし…』と考え、デザイナーという選択肢を自然と頭から外していました。

けれど、資料作りの参考にPinterestを見ていると、気がつけば数時間過ぎていたり、手を動かしているとあっという間に熱中していたり。それだけデザインが好きなんだと認識し、デザイナーに転職しようと決めたんです」

2.Twitterでデザイナー探し。勉強記録の「シェア」で可能性を掴む

デザイナーへの転身を決意した小島さんは、情報収集を開始。周りにデザイナーの知り合いはおらず、はじめは「デザイナー なり方」「デザイナー 未経験」などでGoogle検索をしていたといいます。ただ検索では、数年前にデザイナー転職を経験した人のブログもヒットするなど、最新情報が得られるとは限りません。そこで、より新しい情報を得ようと、Twitterでデザインの発信をしている人をフォローし始めました。

小島「Twitterで『デザイナー』と検索して、片っ端からフォローをしたり、未経験からデザイナー転職をした方を探したりしていましたね。最初は特に自分の投稿はせず、とにかく先人の情報を追っていました」

その後、会社員の仕事と並行しながら、専門学校のWebデザインコースに入学。平日夜は専門学校のカリキュラム動画や独学でデザインを学び、土日は校舎に通い、課題のフィードバックをもらう日々。そのなかで、Twitterの活用の仕方も変わっていきました。

小島「専門学校で学び始めてからは、デザインの勉強記録としてもTwitterを活用し始めました。LPの模写を記録したり、専門学校の卒業制作としておこなった『初めてのWebサイトづくり』の過程を記録したり。自分にプレッシャーをかける意味でも、あえてSNSというオープンな形で記録をしていたんです」

もともとゆうこすさんのファンだったという小島さん。デザインを学ぶ過程の中では、専門学校での制作課題とは別に、ゆうこす公式サイトの「PC版」を作るという自主課題に取り組んだそう。

小島「ゆうこす公式サイトは、スマホでしか見られない仕様になっています。ただ、PCで閲覧できないと、PCでリサーチをすることが多そうで、かつインフルエンサーやYouTuberなどにお仕事を依頼する立場にある広告代理店や制作会社の方に知ってもらう機会を逃しているのではないかと考えました。そこで、Adobe XDの練習がしたかったこともあり、ゆうこすさんの活動が一目で分かるようなサイトを習作として制作。限られた時間でも、ゆうこすさんが各SNSで発信している内容や想いを知ってもらえるサイトにしようと、情報設計を意識しました」

3.Instagramストーリーズ制作は、縦組みの雑誌から学ぶ

ゆうこすPC版サイト制作をTwitterでシェアしたことで、本人の目に留まり、なんとランチのお誘いが。その後、改めて面談などを経て、KOSのデザイナーとして働くことになった小島さん。 現在は、Webサイトのデザインや、SNS発信のクリエイティブ全般を手がけています。InstagramのストーリーズやTwitter用のバナー制作、撮影ディレクションまで、幅広い業務を担っているそう。なかでもInstagramのストーリーズづくりへのこだわりと学び方を教えてくれました。

小島「ゆうこすさんが手がけるスキンケアブランド『youange』はInstagramのストーリーズで、新商品の販売開始のお知らせや商品紹介を発信しています。ストーリーズにアップする画像の制作は、雑誌の紙面デザインから学びやインスピレーションを得ていますね。もともと縦型で成り立ってきた雑誌のデザインからは、参考になる部分が多いんです」

KOSでの仕事は、SNS発信用のクリエイティブ・デザインが求められます。ただ、SNSで求められるものの変化やデザイン自体のトレンド、そしてゆうこすさんの求めるデザインの変化もある中、そのキャッチアップには、日々インプットと試行錯誤が欠かせないといいます。

小島「ゆうこすさんは、思いついたことをすぐにパッと形にしたいタイプです。アイデアもどんどん出てくるので、それをその時々によって適切なデザインに落とし込むことがデザイナーには求められる。もちろん、最大限そこに応えられるよう日々SNS上でのトレンドを把握したり、素材を集めておくといった体制は取りつつも、場合によっては『全部やるのは難しい』と伝えたり、優先度付けや取捨選択を一緒にすることも重要な役割だと考えています」

4.社外のデザイナーに会う・聞く。走りながら学ぶコツ

KOSに所属するスタッフ・インフルエンサーは、現状8人ほど。その中でデザイン・クリエイティブを担うのは小島さん一人。“社内で先輩デザイナーから学ぶ”といったことができない環境の中、いかにスキルアップをしたり、学びを得たりしているのでしょうか。

小島「専門学校に通っていた時から、デザイナーのミートアップや気になったイベントには積極的に参加するようにしていて。その場でのインプットはもちろん、イベントで出会ったデザイナーさんとごはんに行き話を聞くこともあります。

また、最近では『Designer's Bar FLAT』というデザイナーが集う場のお手伝いも、個人的にしていますね。社内にデザイナーの先輩がいない分、他社の方から話を聞いて学ぶようにしているんです」

KOSでの業務は幅が広く、社内にデザイナーの先輩もいないため、社外で得た学びで業務の中に取り入れられそうなものは、実践を通して解像度を上げ、学びに変えているといいます。SNSでの流行や、ゆうこすさんのアイデアなどを起点に動くKOSでは、常に新しいものを求められる。変化が激しい日々を送る中で、“走りながら学ぶ”意識が重要だと小島さんは考えます。

小島「専門学校や美大を出てそのままデザイナーになった人と比べると、まだまだ経験が浅いのは事実。デザイナーになれたことに浮かれている場合ではないんです。KOSのデザイナーに転身した今も、デザインの勉強や記録は欠かせません」

そんな小島さんは現在は、デザインについての学びや業務の中での反省、参考資料などを「自分専用Slack」にまとめているそう。他社のデザイナーと会った際には「思考回路を知ること」を意識していると言います。

小島「たとえば『#気をつけようね』と題したチャネルには、実際に仕事の中で、誰かから注意やフィードバックをもらったことをそのまま記録しているんです。「#好きなデザイン」というチャネルでは、自分の好きなデザインをコメントとともに記録。なぜそれが好きだと思ったのか言語化しておくことで、そのアイデアがどんなところで使えそうか、あとで見返したときにわかるようにしているんです。ほかにも、Twitterなどで流れてきた参考になりそうな記事も、自分専用Slackに飛ばし、時間のあるときに読んでいますね。

他社のデザイナーに話を聞いて、思考回路を知るだけでも、得られる知見は多いです。最近は『情報設計についてはこの会社のデザイナーさんが詳しそうだから聞いてみよう』とか、『こんな事業をしていて今こんな進め方をしている、と話していた人に、もっと詳しく話を聞いてみよう』といった、誰に何を聞くべきかの勘所も徐々にわかってきたと思います」

デザインを学ぶ上で「言語化し、記録をしておくこと」や「多くのデザイナーに会い、話を聞くこと」の二つを大切にしてきたという小島さん。「これからデザインを学びたい人はまず何から始めると良いか?」を伺うと「手を動かすこと」「自分の好きなデザインを知ること」の2つを挙げてくれました。

小島「まずは、手を動かすこと。たとえば私はWebサイトを作ろうとなった時、そもそも『余白の幅はどうやって作るんだろう』とか、『フォントサイズはいくつで作ったらいいんだろう』など、分からないことがたくさん出てきました。分からなくて手が止まったら『じゃあどうやって作るのか、どうやって考えるのか』と自分で調べ、解決していく。分からない壁にぶち当たったら調べ、手を動かす…。その繰り返しで徐々にスキルアップを図ってきました。

そもそも手を動かす以前に、何をデザインしたいかがはっきりしない場合は、たとえばさまざまなWebサイトのデザインが載っているようなまとめサイトを片っ端から見て、自分の目に留まったものを言語化することが一つの方法。いろいろなデザインを見た中で、なぜ自分はそのデザインに目が留まったのか、どういったポイントが自分の中で琴線に触れたのかを言語化します。そうすることで自分のデザインしたいものや、強みとしていきたいデザインの方向性も、わかってくるのではないでしょうか」

[写真]今井駿介 [文]佐藤由佳 [編]小山和之